普通解雇ってなに?普通解雇の進め方が知りたい

普通解雇とは、従業員の債務不履行を理由に、会社側の一方的な意思表示によって労働契約を解除することです

 普通解雇とは、法的な解釈では、従業員の債務不履行を理由に、会社側の一方的な意思表示によって労働契約を解除することです。
 
 
 債務不履行というとお金の貸し借りを想像するかもしれませんが、ここでいう債務不履行とは、従業員は会社に労働を提供し、その対価として賃金を受け取りますが、要はその賃金に見合った労働が会社に提供されていない、若しくは、それ以上の損失を与えているということです。
 
 
 普通解雇の理由は、就業規則や労働条件通知書等に列挙されていることが多く、主に次のものとなります。普通解雇をする場合は、そもそもこれらの解雇理由が就業規則等に記載されていることと、そこに該当する解雇理由があることを確認する必要があります。
 

  1. 身体や精神の健康状態の悪化による労働力の低下
  2. 従業員の能力不足や適格性の欠如
  3. 遅刻早退が多かったり勤務態度が悪い等の職務怠慢
  4. 業務指示・命令を聞かない等の職場規律違反

 

普通解雇の進め方

 
 恐らく、このブログを読んでいる人には、特定の従業員に何らかの問題があり、解雇の文字が頭に浮かんでいる方が多いのではないでしょうか。また、解雇にはトラブルがつきものですし、どうすればいいのか分からないと悩んでいるのではないでしょうか。

 そこで本ブログでは、問題が生じてから解雇に至るまでの流れを簡単に説明していきたいと思います。

 尚、この流れ通りに進めれば不当解雇にならないという訳ではありませんのでご了承ください。過去の裁判例をみても、不当解雇を争った場合は労働者が圧倒的に有利となっています。
 
 

① 従業員の解雇理由となる問題を整理する

 何が問題なのかを紙などに列挙して、まず頭の中を整理していきましょう。その際、問題を列挙したら、続けてその原因と影響を書き出してみましょう。

 例えば、問題が「売上ノルマ未達成」「売上に対して賃金が高すぎる」だとすると、原因は「能力不足」で、影響が「会社の赤字の拡大」というような感じです。原因については、トヨタ式「なぜ5回」ではないですが、安易に思いついた原因で納得するのではなく、真の原因を突き詰めていく必要があります。

 また、その問題が就業規則等に定める解雇理由に該当するかを確認しておきましょう。

 

② 問題の改善に努める

 問題の原因が分かったら、それを改善する方法を考えて下さい。

 これも安易に思いついた方法を取るのではなく、誰かに相談したり、ケースにもよりますが問題の当事者である従業員の意見を聞いたりして、改善方法を検討する必要があります。

 改善方法については、実現可能かを必ずチェックして下さい。強引な方法だとパワハラ認定され、却ってトラブルを大きくしてしまう可能性があります。

 

③ 問題を従業員に認識させる。問題の記録を残す(減給、罰金、始末書等)

 解雇トラブルが大きくなる要因の一つとして、問題の当事者である従業員がその問題を認識していないということがあります。

 従って、問題が起きた際には、口頭や日報での注意や指摘、罰金、始末書の作成等をし、能力不足や職務怠慢等が原因であれば評価の上、減給や降格等を行って、自分に問題があることを認識させる必要があります。

 

④ 問題が改善されていないことを確認する

 一定の期間をみて、問題が改善されているか否かを確認します。

 問題が改善されているのであれば、会社にも従業員にも多大なストレスがかかる解雇をする必要はありませんが、改善が見込まれないのであれば、解雇や退職勧奨等を決断することとなります。

 

⑤ 問題の当事者である従業員に普通解雇を通知する

 解雇を決断した後は、改めて今回の解雇が就業規則に定める解雇理由のどれに該当するかを確認し、その理由を記載した解雇予告通知書を作成します。解雇予告通知書は、必ずしも作成する必要はありませんが、解雇日や予告日、解雇理由に関するトラブルを防ぐためにも作成することをお勧めします。

 尚、解雇をするにあたり、問題の当事者である従業員の同意等は不要です。従業員の合意を得ずに、一方的な意思表示によって労働契約を解除するのが解雇というものなので。

 

⑥ 原則30日前に解雇予告をするか、解雇予告手当の支払いをする

 解雇の場合には、解雇予告手当を必ず支払う必要があると思っている人が少なくありませんが、そうではありません。

 解雇予告手当の支払いが必要となるのは、解雇日予告日の翌日から解雇日(退職日)までが30日未満の場合だけです。従って、解雇日の30日以上前に解雇予告を行えば、解雇予告手当の支払いは不要となります。

 
 先にも書きましたが、解雇後に不当解雇を争点とした裁判を行った場合、過去の裁判例をみても、労働者が圧倒的に有利となっています。ですから問題の従業員が度を超した悪事を行っていたとしても、安易な方法による解雇で、裁判になった場合は、殆ど勝算は無いと考えた方が無難です。

 従って、まずは裁判にならないように努め、次に仮に裁判になった場合でも解雇を回避する努力があったこと等を証拠として出せるようにしておくことが重要なのです。