ミスの巣窟、社会保険料の控除
会社で給与計算を担当している人でも、社会保険料の額をどうやって決めるのかを知らない人も少なくないですし、変更するタイミングに関しては正しく理解している人は殆どいないのではないかと思えるくらいです。
因みに、よくある間違いのケースは次の通りです。
- 保険料率が変更しているのにそのまま変更しない
- 月変で保険料を変えなければならないのにそのまま変更しない
- 給与支給額の増減があり、変えなくていいのに保険料を変更しちゃう
- 月の途中で退職したり産休等になった人から保険料を控除しちゃう
社会保険料控除額の決定方法と変更のタイミング
これを見てもわかるように、社会保険料の控除額の変更は、標準報酬月額か保険料率が変わった場合におこるのです。
まず保険料率ですが、健康保険料率、介護保険料率は、毎年3月以降の率が春頃に公表されるので給与計算ソフトなどを使っている場合は設定の変更が必要です。厚生年金保険料率は、原則、変わりません。
通常社会保険料の控除は「翌月控除」といって、例えば3月分の保険料は4月に支給する給与から控除する、というように翌月に控除するのが一般的です。ただ役員報酬だけは「当月控除」というようなルールを設けている場合や、全員が「当月控除」いう会社も時々みかけますので、自社が「翌月控除」か「当月控除」なのかの確認も必要です。
因みに健康保険料率は都道府県によって異なりますが、介護保険料率と厚生年金保険料率は全国で統一された同じ保険料率になります。
協会けんぽのホームページには、保険料額表というのが公表されており、これには保険料率と各等級の保険料額が載っており、下図の通り、健康保険料率は中央上部に、厚生年金保険料率は右側上部に、介護保険料率は分かりづらいのですが、下段の余白に記載されています。
保険料額表(等級表)が公表されている協会けんぽのURLを貼っておきます。
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g7/cat330/sb3150/r04/r4ryougakuhyou3gatukara/
次に、先に書いた数式に聞きなれない標準報酬月額というワードがありますが、標準報酬月額とは、簡単にいうと給与額の平均値のようなもので、一定のルールによって決定した額を協会けんぽが公表している保険料額表の等級表に当てはめた時の、その該当する等級の額のことです。
仮に、一定のルールによって決定した額が245,320円なら、23万円~25万円の範囲内となる為、19等級ということになり、19等級の額は240,000円とあるので、標準報酬月額は240,000円となります。
尚、一定のルールによって決定した額とありますが、主に標準報酬月額は、次のタイミングで変わり、それぞれ決定のルールが異なります。
- 社会保険の資格取得時
- 毎年行われる算定基礎届の提出時
- 固定的賃金の増減により標準報酬月額が2等級以上の変更時
特に3番目にある「固定的賃金の増減により標準報酬月額が2等級以上の変更時」でのミスが多いので、昇給時は勿論ですが、定期的に確認することをお勧めします。
あと、標準報酬月額や保険料率の変更に関係なく、月の途中で退職したり、産休や育休に入ったりした場合は、その月の保険料がかからなくなる為、その月分以降の保険料を控除してはいけないのですが、控除してしまっているケースをよく見かけます。
退職や産休等の開始がある場合は、それが月末なのか、月の途中なのかを確認して控除の有無を判断する必要があります。
最後に、雇用保険の保険料について少し触れておきます。雇用保険の控除額は凄くシンプルで、毎月の通勤手当も含めた総支給額に社員負担分の雇用保険料率を乗じたものです。
従って、残業代等があり総支給額が変動すれば、控除額も変動します。
雇用保険の保険料率についても、毎年4月から翌3月までの率が春ごろに公表されるます。
ただ令和4年度に関しては、珍しく4月から9月が3/1000で、10月から翌3月が5/1000と年度の途中で変わる為、注意が必要です。