給与計算って何をすればいいの?
なぜなら給与計算は、賃金に反映させる勤怠データの抽出から、総支給額の計算、控除額の計算、振込作業と給与明細の作成など、作業が多く、またその作業には、会社ごとに定めた給与計算ルール、労働基準法、社会保険関係の法律、税金の法律などの細かい知識も必要とするからです。
これらのことを知らずに給与計算を行ったら、正確な支給額が出せないのは勿論のこと、それに気が付いた社員からは間違いを指摘され、未払い分の残業等があれば労働基準監督署による指導の対象になったり、訴えられて裁判になり未払い分以上の額を請求されることにもなるかもしれません。
そしてなによりも、そのような正確な支給額がだせない会社は、社員に愛想をつかされ、モチベーションは低下し、社員の定着も悪くなったりと、会社の存続自体に大きな影響を与えることは容易に想像がつきます。
だから「給与計算なんて簡単だ」と侮ることなく、しっかりと給与計算を理解した上で、行うことが必要なのです。
給与計算は、労働の対価である賃金額から社会保険料や税金等の額を控除して支給額を確定する作業です
給与計算に対して「作業が多い」「細かい知識が必要」と警鐘を鳴らしましたが、シンプルに表現すると、給与計算とは、次の式のとおり差引支給額をだす作業です。
基本給が月給なのか時給なのか、残業や深夜労働があるのか、欠勤や遅刻があるのかにより、労働の対価である総支給額は変わりますし、社会保険等の資格取得の有無や、標準報酬月額、扶養する家族等の数により控除額も変わりますが、原則として上の式によって差引支給額を計算することが、給与計算の基本中の基本です。
こんなこと当たり前だと思われるかもしれませんが、これを正しく理解していない人は少なくありません。もしこれを理解していないと、例えば、遅刻や欠勤等があった場合の不就労分の控除を上の式の控除額の箇所で控除してしまったり、仕事上で社員が立替えた金銭を返金する場合に、上の式の総支給額の箇所に含めてしまう等のミスをしてしまいます。ただ、こうしたミスは決して珍しくないのが実情です。
まずは、この基本をしっかり理解することが重要なのです。
給与計算の手順を確認してみましょう
給与計算の基本を理解したら、給与計算をどのように進めていくのか、大まかな流れを確認してみましょう。
- 対象社員の基本給や社会保険料、扶養数等の基本情報の確認
- 出勤簿やタイムカードを確認し、給与計算に必要な勤怠情報の抽出
- 固定的賃金の変更の有無、変動的手当や臨時的賃金の有無等の確認
- 社会保険料等の変更の有無等の確認
- ①~③の情報から総支給額を計算
- ①と④の情報から控除額を計算
- ⑤総支給額-⑥控除額によって差引支給額(振込額)を計算
- 給与明細の作成
- 差引支給額の振込
- 賃金台帳等の管理
既に給与計算をしている会社で、この①~⑩の作業の中で行っていないものがあったら注意が必要です。例えば②の出勤簿やタイムカードの確認をしていないというのは、論外ですが、①の扶養数の確認や、④の社会保険料等の変更の有無等の確認をしていない会社は、珍しくないどころかワンサカあるという感じです。
給与計算ルールを固めるなど、他にもやることはありますが、最低でもこの①~⑩の手順を意識して作業を行うことが必要です。
給与計算は間違えると大変
残業代等の割増賃金を支給していなかった場合等の労使トラブルの原因となるような問題ばかりでなく、ちょっとしたミスでも修正するのに大変苦労することがあります。
仮に過誤払い等のミスが発覚した時に、その金額が大きかった場合等、社員に対して「返済してください」とは言いづらいケースもあるからです。
たとえば社会保険料の控除額に1万円程度のミスがあることに半年位気が付かず、6万円位返金してもらう必要があった場合、その社員の月給額にもよりますが、1回で返金してくださいとはなかなか言えないものです。
仕方がないので、社員と合意の上で分割して返金してもらうことになるのですが、その期間が長いと更なるミスが発生することも少なくなく、返金が終わるまで給与計算の担当者は気が抜けません。
このようなことが頻繁に起きないように、給与計算は、予めミスをしないようにしっかり準備してから行うことが重要なのです。
まとめ
社員を雇用するのであれば、正しい給与計算をして正しい支給額を振り込むことは、会社にとって、社員に対する最大の義務です。
難しいから、分からないからと開き直ったり、正しいか誤っているかが分からずに給与を支給するというのは社員に対する裏切り以外に他なりません。
このブログを見ている人は、そのことを十分に理解している人だと思いますが、給与計算をしっかり理解して正しい給与を支給するか、それが出来ないのであれば給与計算代行業者に委託するのか、会社は判断しなければなりません。